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短編少女 三浦しをん、荻原 浩、中田永一他 [作者ま行]


短編少女 (集英社文庫)

短編少女 (集英社文庫)



ストーリーは人気作家が「少女」をキーワードに紡いだ短編9本を収録したアンソロジー。
少女の微妙な心情や確かな成長が感じられることはもちろん、
各作家の個性も楽しむことができる贅沢な1冊。

てっぺん信号 三浦しをん
空は今日もスカイ 荻原浩
やさしい風の道 道尾秀介
ガーデン 中島京子
宗像くんと万年筆事件 中田永一
haircut17 加藤千恵
薄荷 橋本紡
きよしこの夜 島本理生
イエスタデー 村山由佳

今人気の作家さんが少女をテーマにした
短編作品のアンソロジーということで、
どれもそれぞれに個性が出ていて、
多感で揺れ動く少女をあらゆる角度から描かれていて
少女から大人になる微妙な心理描写が楽しめました。

女子独特な世界観が幼い頃から携えていますが、
大人の女性の世界とはまた少し違い
少女らしい繊細な心の世界観を味わえて
懐かしくもあり甘酸っぱい思いでいっぱいになりました。

特に印象的だった作品は「てっぺん信号」、
「宗像くんと万年筆事件」、「きよしこの夜」、
「イエスタディズ」。

「てっぺん信号」は切ない乙女心が上手く描かれていて、
あることで知り合うきっかけとなった初老の女性。
つっけんどな口調だけれど重みのある言葉の数々。
一番の問題は、悔いのない、だれに恥じることもない生き方を
死ぬまでできるかどうかだと思うんだけど、ちがう?
こうやって若い人も歳を重ねている人かた何かを吸収して
光りのある方へ目指していくというのは良い事だなと思いました。
一つ一つの言葉が大切に綴られているようなストーリーにも感じました。

荻原浩さんの「空は今日もスカイ」は読んでいくうちに
何処かで読んだことがあるフレーズだと思って解説を見てみると、
「海の見える理髪店」の中に収録されていたものでした。
また読んでみるとリズミカルな言葉で少女らしい世界が広がっていて
幼い頃の気分が味わえました。

「宗像くんと万年筆」は小学校が舞台となって、
唯一のこの本の中ではミステリーということもあって
他の作品とは違う切り口から少女が描かれています。
宗像くんの本格的な謎解きと不思議なキャラクターにが印象的です。
そんな彼に迷いながらも手を差し伸べてくれた女の子
微妙な心が描かれているのも良かったです。

「haircut17」は17歳という何をするにても
中途半端な年齢のことに対して、
その年頃のような文体で書かれていたような気がして、
軽くもあり重くもある言葉の綴りのようでした。
ストーリーも他と比べると薄い感じで
まるでコバルト文庫を読んでいる感覚でした。

「きよしこの夜」はこの年頃でもいくら親しい友達に
でも誰にも言えないことが
更に悲しくも辛い出来事が心の中でいつまでも残って、
前に進もうとしても進めない悩める少女の心の描写が
リアルでとても切なかったです。
でも最後には苦しかった時間が終わりの兆しが見えて。
誰かに言って欲しかった言葉。
もらうのではなく、あげることで、救われることもある。
という言葉で読み手としても心が救われた思いがしました。

「イエスタデイズ」は唯一過去の回想から少女時代を振り返っています。
少女時代に誰でも身近な男の子が急にこんな風になったり、
それまで何も意識していなかったことがあることをきっかけに
男性というのことを意識してしまうという
どこかほろ苦いような経験が綴られています。
そしてそんな思いからある曲をきっかけにして
偶然の再会に遭遇することに。
ラストにはドラマチックになってこの先の展開が楽しみになってしまいました。

女性は自らのそれぞれの時代と成長過程と重ね合わせながら
アルバムをめくっていくかのように読んで楽しめるかと思います。

男性は男性とはまた違う繊細な心の移り変わりを読み取ってくれると
日頃の女性との付き合い方も少しは分かってくれるかなとも思いました。

読んだことのない作家の作品がここで読めて
けっこう気に入った作品もあったので
これをきっかけに他の作品も読んでみたくなりました。
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