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湊かなえ 贖罪 [作者ま行]


贖罪 (ミステリ・フロンティア)

贖罪 (ミステリ・フロンティア)



ストーリーは取り柄と言えるのはきれいな空気、
夕方六時には「グリーンスリーブス」のメロディ。
そんな穏やかな田舎町で起きた、惨たらしい美少女殺害事件。
犯人と目される男の顔をどうしても思い出せない四人の少女たちに
投げつけられた激情の言葉が、彼女たちの運命を
大きく狂わせることになるというサスペンス
本屋大賞受賞後第一作。

前作の『告白』を読んで衝撃的だったのでこの作品も
読んでみたいと思い手に取りました。

手法は『告白』と同様で一人一人の主人公の視点から書かれていて、
何故か事件が起こった場所もプールという共通点でした。
小学生が事件に遭遇するとなると舞台となる確率は学校が多くなり、
その中でも視覚になりやすい場所と
いったらプールが浮かぶので偶然にも同じになったのかと思います。

殺人事件に遭遇してしまった少女達がどうしても犯人の顔を思い出せない
というのがミステリアスでストーリーにどんどんと引き込まれました。
そんな時に殺害された少女の母親から、
「犯人を見つけるか、わたしの納得できるような償いが
 できなければ復讐をする。」なんて言葉を投げつけるなんて
本当に嫌で最低な大人だと思いました。
母親からしてみれば大事な娘が亡くなってしまったことには
同情できますが、子供に向ける言葉ではないと思います。

こんな言葉をつきつけたせいでこの少女達は大人になるまで
ずっと罪も無いのに罪を着せられたみたいに怯えながら生きていたりして、
トラウマになり人生を狂わせられてしまったのかと思います。
彼女達をよく見てみると共通していることはそれぞれコンプレックスを
抱えていることが分かります。

母親の過去もあまり良いものではなく、少し自分は人と違う人という
高飛車なところがあったと思います。
都会から転勤して知らない土地に移った時には、
その土地の世間体、習慣、よそ者扱いなどをされていた時には
少しは同情できましたがやっぱりこの性格は好きにも同情もできなくなりました。

犯人は思わぬところから出てきますが、
犯人の動機がいまいち分からないです。
なんでこんなこんなところから?
少し強引な感じがしました。

償いって本当になんだろうか?
と本章でもありますが、これだと逆に償ってなんだろうかと思ってしまいました。
贖罪というタイトルなのでこれだと罪を償っているのだろうかと・・・

最後が意外にもさらりと終わってしまって、『告白』の衝撃とどうしても
比較してしまうと少し物足りない感じがしました。
けれどとても読みやすくミステリー要素があるので比較をしなければ、
この作品も良いと思います。


HPのYuimiko's MemoriesのGalleryにも本の紹介をしているので、
そちらも良かったら見てみて下さい。
http://happy1996.web.fc2.com/

沼田まほかる 九月が永遠に続けば [作者な行]


九月が永遠に続けば (新潮文庫)

九月が永遠に続けば (新潮文庫)



ストーリー高校生の一人息子の失踪にはじまり、
佐知子の周囲で次々と不幸が起こる。
愛人の事故死、別れた夫・雄一郎の娘の自殺。
息子の行方を必死に探すうちに
見え隠れしてきた、雄一郎とその後妻の忌まわしい過去が、
佐知子の恐怖を増幅する。
悪夢のような時間の果てに、出口はあるのか—。
人の心の底まで続く深い闇、その暗さと異様な美しさをあらわに描いて
読書界を震撼させたサスペンス長編

沼田さんの作品は初めてで、第5回ホラーサスペンス大賞受賞作ということで
映画のホラーは苦手だけれど本ならば大丈夫だということで面白そうなので
手に取りました。

ホラーサスペンスという割りには読んでいてホラー性は特に感じなく、
サスペンスというには少し物足りないような感じがしました。
けれど、主人公の佐和子の息子が失踪が始まったことにより、
どんどんとストーリーに飲み込まれてしまいました。
佐和子に関わり合う人の中での次々と起こる謎の出来事。
その出来事が点でまばらになっていたものが、
最後には終結して線となってくるわけですが、
その最後の犯人というのが想像もつかないところから出てきたので
これは驚きました。
案外犯人は短絡的な考えでしてしまったのかもしれないですが、
これは誰でも心の奥底に潜んでいる闇なのかもしれないと思います。

佐和子の息子が失踪してからの心理は母親ならでは視点で書かれていて、
とても細かく書かれていて、気持ちをどうしても落ち着かせていられない
状況が目に見えるようです。
けれど佐和子はいつも思っているだけで、何か探そうという行動力が
あまりなかったのは何故なんだろうと思ったりしました。
そして理解しにくいのが夫であった雄一郎と息子にも心を奪われてしまった
亜沙実という女性の存在。
あんなに初めは嫌悪感を抱いていたのに何故最後は平然となったり、
包み込みたくなったりしてしまうのだろうかと。
普通の女性だったらばこんな事をされてしまったら怒りにはならないだろうか?

そしてホラー性が無いとは思いますが、
性描写があまりにもリアルに書きすぎて、これは引いてしまいました。
特に亜沙実の過去のおぞましすぎる暴漢の描写や
発作が起きた時の描写はグロテスクなのでぞっとして気持ち悪い感じがしました。
このような表現があるためか、同じような作品を書く桐野夏生さんに
「ここまで書くか」と評されたそうです。
ここがホラー性になるのでしょうか?

そんな中でも息子の友達の近所の服部さんは、
ちょっとその場の空気を読めない人でおかしな人ではあるけれど、
この作品の中では唯一ほっとさせられるようなキャラクターなので
なかなか良い味は出していると思います。
こんな暗く重い中なのであえてこの人物が必要だったのかもしれないとも
思えました。

結局、この作品で何が伝えたかったのかと問われると
その答えが私には導くことができなかったです。
ただ佐和子が最初と最後で亜沙実への思いが変わったので、
この女性がどんな綺麗な人なのか、
どんな心の持ち主なのかと知りたくなってしまっただけでした。

読んでいて引き込まれていくだけの作品ですが、
好みがあるので特にお勧めはしません。
もし興味があったら読んでみて下さい。


HPのYuimiko's MemoriesのGalleryにも本の紹介をしているので、
そちらも良かったら見てみて下さい。
http://happy1996.web.fc2.com/

さだまさし アントキノイノチ [作者さ行]


アントキノイノチ (幻冬舎文庫)

アントキノイノチ (幻冬舎文庫)



ストーリーは杏平はある同級生の「悪意」をきっかけに二度、その男を殺しかけ、
高校を中退して以来、他人とうまく関われなくなっていた。
遺品整理会社の見習いとなった彼の心は、
凄惨な現場でも誠実に汗を流す会社の先輩達や同い年の明るいゆきちゃんと
過ごすことで、ほぐれてゆく。
けれど、ある日ゆきちゃんの壮絶な過去を知り・・・
「命」の意味を問う感動長篇。

さださんの小説は『眉山』、『解夏』などを読んだことがありますが、
良い作品ばかりなのでこの作品も手に取ってみました。
さださんの曲は歌詞が長いというのが特徴ですが、
それにはやはりこのような小説が書けるというベースがあるから
良い歌詞が生まれ曲も生まれるのかなとも思いました。

このタイトルを聞いた時には、アントニオ猪木をもじっているのかと思いました。
けれどこの作品を読んでいるとその意味も分かります。

遺品整理会社というのはテレビでも観たことがあり、
実際に会社の方とは会ったことはないですがお世話なったことがあるので
とても興味深いといってはおかしいですが他人事とは思えませんでした。
この作品の中ではいくつかのケースで亡くなった方の遺品整理をしていますが、
綺麗な死に方というというのはなく、読んでいても酷い状態のものがありました。
そのような物を遺品整理人の方は、文句一つも言わなく、
亡くなった人に対して心をこめて最後の仕事をしているのでとても尊敬します。

杏平の働いている上司の佐相さんの1つ1つの言葉にはとても心の温かみを
感じられずにはいられないです。
遺品整理人はただ掃除をして綺麗掃除して、その人の良いものを残してあげて、
亡くなった人の面子を護ってあげることが仕事。
仏さんの代わりになってやってあげる仕事。
天国への引っ越し屋さん。
これをモットーとしているところがまた心を打たれます。

遺品整理人の仕事の中ではやはり多いケースが孤独死。
孤独死は今や社会問題となって、高齢化社会だけの問題だけではなく、
若者の間でも多くあるそうです。
でも孤独死と一言で片付けられてしまうのはあまりにも可哀想な事だと
この作品の中からは分かります。
沢山の人と一緒に暮らしていても孤独な人もいたり、
家族と一緒に暮らしていても心が孤独な人はいるのに・・・
という佐相さんの言葉。
なんでもひとくくりで孤独死というのは寂しい思いがしました。
考えてみれば、人は一人で生まれて一人で死んでいくのだから。

杏平もこの仕事に就く前には殺意を抱いたことがあり、
それによって精神的に追い詰められたことがある過去があるけれど
この仕事に就いてからは徐々に心も穏やかになっていき、
過去の自分とも向き合ってどんどんと成長していくのが分かります。

一方ゆきちゃんと親しくなっていくうちに、
思いもよらなかった過去に会い二人でその過去にも立ち向かって
支え合うのがとても良いです。

命の重さが色々な場面で感じられ、生命の大切さ、凄さを感じられます。
重いテーマをこのように爽やかに分かりやすく描かれているので、
とても共感出来ました。

この仕事は人と人をつなぐ仕事、そればかりでなくもしかしたら
時間や空間をもつなぐ仕事。
親子、孫など色々なものをつなぐ仕事なので大事さだとも思いました。
この仕事だけでなく人とのつながりを今は大切しなければいけないとも思いました。


HPのYuimiko's MemoriesのGalleryにも本の紹介をしているので、
そちらも良かったら見てみて下さい。
http://happy1996.web.fc2.com/
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