So-net無料ブログ作成
検索選択
作者や行 ブログトップ
前の10件 | -

短編学校 米澤穂信、本多孝好、中村航他 [作者や行]


短編学校 (集英社文庫)

短編学校 (集英社文庫)



ストーリーは個性あふれる作家陣が、
大人への階段を上ろうとする人生の一瞬を
鋭くとらえた短編作品10本を集めたアンソロジー。

913 米澤穂信
エースナンバー 本多孝好
さよなら、ミ子オ 中村航
タウンター・テコンダー 関口尚
骨 井上荒野
ちょうどいい木切れ 西加奈子
少年前夜 吉田修一
サイリウム 辻村深月
マニアの受難 山本幸久
ねむり姫の星 今野緒雪

短編少女、少年と読んで面白く、
今年三部作の短編集の最終ということもありこの本を手に取りました。
今回は学校がテーマだと思い読んでいましたが、
学校というテーマは殆どなく子供から大人への階段を上っている
最中のことが中心で普通のもあればミステリーやSFという
ジャンルもあって色々と楽しめました。

前半の作品は割とストーリーも面白く濃厚な作りでしたが、
後半の作品はさらりと読めてしまって物足りさが少々残りました。

特に印象的だった作品は「913」、「エースナンバー」、
「ちょうどいい木切れ」、「少年前夜」。

「913」は高校の図書館からごく平凡な学校生活でも
始まるのかとも思いきや、金庫を開けて欲しいという先輩からの
依頼から探偵コンビができ、このやり取りも見所ですが、
そこから数字へのトリックや謎解きになっていき
独特な雰囲気の中で解決されていくのが面白かったです。

「エースナンバー」はこのテーマにも相応しい
学校での部活が舞台になっています。
単純な青春のスポーツだけではなく、その裏側に隠されていた
当時のエースとしての心境とそれを取り巻いている状況が
当時では思い知ることが出来なかったものが
後になってから本当のことが解明されていくという
何とも甘酢っぱい思いがしました。
けれどこうゆう裏側が隠れて見えないからこそスポーツの良さ、
スポーツ精神の良さがあるのだと思わされました。

「ちょうどいい木切れ」はタイトルからは
とても想像の出来ないものでした。
自分の背の高さがコンプレックスになっている主人公が
背の小さな人と出会ってしまうというそれだけの話ですが、
まるで得体の知れない物を追っていくかのような描写は
ドキドキはらはらとしてとてもスリリングでした。
なんだかくすりと笑えてしまうオチが何とも掴み所がない面白さでした。

「少年前夜」はとある田舎に住んでいる少年が
少女と付き合っているという普通の光景。
けれどこの少年にはとても暗い過去を背負っていて、
拭い去りたくても出来ないことが
またこの少年を苦しめています。
本当は心の中では寂しくて会いたくてたまらない母親なのに
それが普通の生き方ができなかったせいか、
それも上手受け入れること出来なかったので
とても切なく感じました。
ラストには明るい兆しが見えるような素振りもありましたが、
明確には描かれていないのでこの少年の生き方がとても気になります。
これをきっかけに全てを受け入れて一歩進めれば良いなと思いました。

まだ大人にはなりきれない、
粗削りな大人や未熟な大人ならではの
ことばかりなので青春のような甘酸っぱさやほろ苦さなどが
随所に出てきてそれがまた懐かしい気分になったりして
新たな思い出のページを捲っていたようでした。

いくつ歳を重ねてもまだまだいい大人にはなれないので、
こうやって初心を戻れるのも良いなと思いました。

読んだことのない作家さんが今回は多かったので
これをきっかけに他の作品も読んでみたくなりました。

山本文緒 なぎさ [作者や行]


なぎさ (角川文庫)

なぎさ (角川文庫)



ストーリーは故郷を飛び出し、静かに暮らす同窓生夫婦。
夫は毎日妻の弁当を食べ、出社せず釣り三昧。
行動を共にする後輩は、勤め先がブラック企業だと気づいていた。
家事だけが取り柄の妻は、妹に誘われカフェを始めるが。
小さな秘密が家族と暮らしに変化をもたらしてゆく。
生き惑いもがきながらも、人生を変えてゆく大人たち。傑作長篇!

夫婦がそれぞれに悩みを抱えているのに、
それが夫婦なのにある一定の隙間で保ち生活を送ってしまう。
そしてそれがとうとう心身共にギリギリになったところで
お互いの悩んでいた所にやっと踏み込むでいくという
よくある夫婦のタイプでもありますが、
これがお互いに信頼していたから言い出せないのか、
それとも信頼できないから言い出せないのか。
これは実際の夫婦でもギリギリのせめぎ合いがあるのでよく分かります。
これが夫婦ではなかったらどんな風な展開になっていたのだろうかと
思ってしまいました。

その一方で芸人に挫折し会社員となった夫の後輩が
程良い距離感で上手く付き合いながらも、
一人しきれず夫婦とは違った青年らしい悩みを抱えて
生き方を出していく姿が泥臭いですが
自分に正直に生きている感じが好感を持てました。

姉妹で良い仲だと思ったらまたここにも少しの隙間があったり。
その原因にもなっているのがこの家族の秘密があり
これが夫婦の悩みに少し加担したところもあり
前半よりも後半はかなり状況が蜜になってきた場面が
多くて思わずページを捲る手が止まりませんでした。

妻が誰にも悩みを言うことが出来ず、
自分の膝を抱えて泣き過ごしていくという気持ちが
とてもいたたたまれなかったです。
側に誰かいるのに誰も打ち明けることができなくなってしまうと、
自分で自分を慰めるしかないかと
大人になればなるほど孤独な世界があるかとこの本でも痛感します。
けれど妻に仕事をはじめてから徐々に本来の自分を
取り戻していく場面は、とても生き生きとしている環状が伝わり
思わずそのまま頑張れ励ましたくなりました。

夫婦とのあり方も大事だと思わせる作品でもありましたが、
家族とは別に側にいて誰かいて励ましてくれている人の姿や言葉が
とても心を動かされました。
中でも
「力まなくていいよ。
 生きていくということは、やり過ごすということだよ。
 自分の意思で決めて動いているようでも、
 ただ大きな流れに動かされているだけだ。
 成り行きに逆らわずに身を任すのがいいよ。
 できることはちょっと舵を取るくらいのことだ。」
この言葉に私も背中を押された気持ちなので、
辛く悲しくなった時には思い返したいと思っています。

久しぶりに山本さんの作品を読みましたがとても心が温まり、
夫婦、家族をはじめとして全てを取り巻く状況の中で
それぞれに目を向けることに大切さ、
そしてまた前向きになっていこうと思える作品でした。


吉田修一 怒り(下)  [作者や行]


怒り(下) (中公文庫)

怒り(下) (中公文庫)



ストーリーは殺人現場には、血文字「怒」が残されていた。
事件から1年後の夏、物語は始まる。
逃亡を続ける犯人・山神一也はどこにいるのか?
房総半島、新宿沖縄。3組の家族の前に前歴不詳の男が現れて……。

身近な人が犯人と似ているということとなるとどうなるのだろうか。
自分に置き換えて考えていると考えさせられます。
犯人ではないと分かりながらもどこか心の隅で疑ってしまう。
そんな疑いをかけながらその人に対してではなく、
その場から逃げようとする心理も働くのかと。

そして人は今まで信頼していた人を信じられなくなったらどうなるのだろうか。
信じられなくなった瞬間に今まで築き上げたものや
その人の大事な物までも失ってしまう可能性が大いにあり得るということが
この作品ではよく分かりました。

三つの舞台での身元不明の男性が同じ犯人かと上巻では思いましたが、
下巻ではそれぞれ違う人物だということが徐々に明かになっていくのでこれは意外でした。
そして沖縄の舞台でレイプ被害に遭った少女が、
少年のために勇気のある行動をとったことについても意外でした。
これはお互いに口に出してはいないものの
心のどこかで通じるものがありお互いを支えているものだと思い、
少女がこれから厳しい環境にさらされながらも
懸命に生きていこうという決意のように感じられました。

この事件である人が関わりますが、
事件を発見したにも関わらず何もせずにその場で笑っていたというのは
とても憤りを感じて許せない気持ちなりました。

結局、事件の真相が分からずはっきりとした動機が分からなかったのと、
美佳の過去も何も分からないままだったので少しもやもや感が残りました。
けれど実際の犯罪でも最近の事件でははっきりとした動機もなく
残酷な事件なども多発しているのでこれもありなのかと思いました。
けれど「怒」と書かれていたのは不明なままなので納得がいかないです。

現代社会も様々に多面的な顔を見せるように
人の心も多面的な面を持っていて
それがいつどのように出てきてくるのかというのが鍵だと思います。

この作品はミステリー作品ですが、
ミステリーというよりも心理的要素が大幅に占めているので
ヒューマ二ティー作品だとも思いますが、
それでも十分に緊迫感漂い読み応えのある作品でした。

吉田修一 怒り(上) [作者や行]


怒り(上) (中公文庫)

怒り(上) (中公文庫)



ストーリーは殺人現場には、血文字「怒」が残されていた。
事件から1年後の夏、物語は始まる。
逃亡を続ける犯人・山神一也はどこにいるのか?


作品と同名が映画化されるというので面白そうなので手に取りました。

東京千葉沖縄の三つの舞台に身元不明の三人男が現れて、
それぞれの土地でのストーリーが並行に展開されていきます。
そのストーリーの中でそれぞれの人物に悩み、問題があり、
その描写が細かく情景などもとても細かく描かれていたので
とてもリアル感があって頭の中で想像しやすかったです。
サスペンスというのに伏線というべきそれらしきものが
大概の場合には出てくるのですが、
どこにも見当たらずに展開されていくので、
逆にこれがスリル感となり読む手を早めさせられました。

三つの舞台でのストーリーもどれも現実的な問題に直面しているのが
ひしひしと伝わりましたが沖縄での問題は読んでいて
とても胸が苦しい思いがしました。
途中で涙が出るのを抑えるのが必死でした。
南国の蒼くて綺麗な海とは対照的にここに来て
沖縄の米軍基地問題をまざまざと考えさせられたところが見事だと思います。
改めて沖縄の人達の苦悩を考えられずにはいられなくなりました。

三つの舞台の他に凶悪事件を追っているある警察官の動きも
サブストーリーとして動いているのでこちらもまた違った観点から
進みそうなので注目したいところです。

まだ事件解決への糸口が出ていないので、
今後どのようにして物語が展開していくのかが楽しみです。

山口花 あなたと暮らせてよかった―犬から聞いた素敵な話 [作者や行]




目次
01 To my Dog飼い主から愛犬へ―。
(ヒメ―目覚めたときの、この胸のワクワク! ブチ―ブチが教えてくれた大切なこと。
コテツ―いつまでもあたしの心にいてくれる。
ドリー―忘れずにこれから前に進むこと。
ジョン―初めて見えた、たくさんのこと。
ポン―私はいま、昼間が好きだ。
クルミ―どんどん元気に、どんどん笑顔に。)

02 To my Master愛犬から飼い主へ―。
(ハッピー―みんなのこと、ボクは忘れない。
ブブ―どんなふうに笑うかな?
リリー―みんなの笑顔に会いに行かなくちゃ。
風太―いつもそばにいるよ。
リキ―いっぱい、いっぱい笑おうね。
マロン―パパのこと、応援してるからね。
レオ―ボクは、きっとしあわせになります。)


ヒメの話は今の私が似たような心境のストーリーなので共感出来て
心が癒されました。
ドリーはお別れをする話だったので
ちょっと涙が出そうになってしまいました。
犬っていつでも健気に何も言わずに目を潤ませて
人の言葉を聞いてくれているので本当に良いなと思いました。
その反対に犬もご主人様が優しく接してくれたら
嬉しいのでもっとそれに答えようとするので
犬ってペット以上にまさに家族の一員だなと思いました。

愛犬から飼い主になる章は多分犬の行動を見て、
犬がこんな気持ちなんだろうなという感じで書かれています。
こう思いで犬がもし思っていたと考えると
犬の行動やちょっとした仕草を見逃せないかと思いました。
犬の気持ちになって読むのもまた違って面白く意外な一面を見ることが出来ます。

犬がいることによって生活が潤ったり、
心が和んだり、人と同じように心を持っているので
大事にゆっくりと育ててあげれば本当に心の通う相棒になると思いました。
なんだかそんな関係がとても羨ましく思い、
この本を読んでいると犬が飼いたくなってしまいます。

犬の種類も様々で盲導犬、セラピー犬、子犬、成犬、老犬などと
成長に合わせた犬も登場します。
これだけでも犬のれぞれのストーリーがあり、
人と同じように十人十色で個性が伝わって良かったです。

どのストーリーも共感と感銘でき、
とても読みやすく心の癒しの一冊にお勧めです。


HPのYuimiko's MemoriesのGalleryにも本の紹介をしているので、
そちらも良かったら見てみて下さい。
http://happy1996.web.fc2.com/

山口花 犬から聞いた素敵な話 涙あふれる14の物語 [作者や行]


犬から聞いた素敵な話 涙あふれる14の物語

犬から聞いた素敵な話 涙あふれる14の物語



ストーリーは犬から人へ――、人から犬へ――。ずっと、いつまでも。
実話をもとに人と犬とのキズナを描いた全14編の感動ストーリー。

第一章 飼い主から愛犬へ――。
1 うちに来てくれて、本当にありがとう。
2 ずっと僕たちのなかで生きている。
3 あるがままを受け入れること。
4 私はいま、ひとりじゃない。
5 さあ、行こう。
6 ゆっくり、しあわせになろうね。
7 あきらめないで信じること。

第二章 愛犬から飼い主へ――。
8 もっともっと、泣いていいよ。
9 助けてくれて、ありがとう。
10 春になったら、またお庭に花を。
11 よかったね……山本さん。
12 アタシ、忘れない。
13 またいつか、きと……。
14 しあわせになってね。

犬を飼ったことがないですが、犬が好きなので
この本が紹介されていた時にすぐに目に留まったので手に取りました。

どのエピソードも心を揺さぶられて、
目頭が熱くなってしまうものばかりでした。

やはり飼い主さんから愛犬の方が心打たれるものが多く、
飼い主さんが辛い事、悲しい事、寂しい事などがある時に
そっと何も言わずに傍らに居てくれて
心を癒してくれるのが犬とは思えずまるで人のようでした。
言葉はなくても行動だけでも癒されるのが
良いところで人よりも癒される効果が大きいかとも思いました。

愛犬から飼い主さんでは愛犬はきっとこんな風な言葉を
話しているんだろうなというのが、仕草、行動から良く分かるので
犬を見る視線がこれからは変わりそうな気がします。

ぺットはその家の悪い物を吸収してくれたり、
取り除いてくれたりとぺットを通して良い家族間が生まれるというのを
聞いたことがありますがこの本を読んでまさにその通りだと思いました。

犬は特に飼い主さんに忠実なので家族の一員といっても過言ではないと
改めてこの作品で思いました。

言葉はなくてもそばにいるだけで幸せな気分。
そんな関係が近くにいるだけで本当に幸せなことだと思いました。

心温まるエピソードばかりで幸せな気分になれるのでお勧めな作品です。


HPのYuimiko's MemoriesのGalleryにも本の紹介をしているので、
そちらも良かったら見てみて下さい。
http://happy1996.web.fc2.com/

横山秀夫 64 ロクヨン [作者や行]


64(ロクヨン)

64(ロクヨン)



ストーリーは昭和64年に起きたD県警史上最悪の誘拐殺害事件を巡り、
刑事部と警務部が全面戦争に突入。広報・三上は己の真を問われるという
究極の警察小説

横山さんの作品は何冊か読んだ事がありますが、
ドラマで観る方が多いですが、それでも良い作品ばかりなので
この作品も期待して手に取りました。

警察内部のこんなに赤裸々に描かれている作品は初めてかもしれないです。
今まで知らなかった事もここでは知ることができました。
主人公の三上は広報課に所属していますが、
この広報課も同じ所轄の警察の一部なのにまるで扱いが違うのには驚きです。
特に刑事部や高官いわゆるキャリアと呼ばれる人達とは
待遇が違うので同じ仕事のやり取りを見ているだけでも
態度が違うので苛々としてしまいました。
まさに踊る大捜査線の青島のように
「事件は会議室で起きているんじゃないんだ 現場で起きているんだ」
と言いたくなる気分でした。

広報課というのは事件などがあった場合に記者クラブなどに
事件の状況などを知らせる窓なのです。
警察と世間の壁を唯一取り外せる場所でもあるのですが、
マスメディアは面白おかしく取り上げ、
事件が大きければ被害者にさらに被害を与え、
身内の事件は隠したり、小さく扱ったりしているという矛盾があります。
これらの矛盾を三上は警察という組織に疑問を呈しています。

前半はこれらの事が中心で、登場人物が多いので
誰がどの役職についているのか分からなくなってしまうほどですが、
中盤からは昭和64年に起きたD県警史上最悪の翔子ちゃん誘拐殺人事件をめぐり、
刑事部と警務部が全面戦争に突入していくのでストーリーに引き込まれていきます。
犯人に辿り着くまでは三上も同じような苦しみを
実は私生活では味わっているのでこの事件に対しては
犯人を捜すという任務もありますが、己との戦いでもあったと思うので
苦しい思いをしたと思います。
そして最後の犯人には驚きの展開で締めくくられますが、
一見全て上手くいったと思いますが、
三上の私生活での1つの解決がまだ残っているので
それが気がかりの余韻でした。

この作品では警察組織に対しての問題点もあげたりしていますが、
それだけではなく、警察とマスコミの関係、マスコミのあり方、
家族、夫婦などとあらゆる視点からも考えさせられる事が多いと思いました。

これから警察官がテレビなどで事件の発言などをしているのを
観ることがあると思いますが、そのたびにこの作品のような
日常劇が行われているのかなと想像してしまいます。

警察小説だけでなくミステリーとしても十分楽しめると思います。
647ページととても長い作品ですが、
中身も重厚だと思うのでお勧めです。

作品には登場人物が多く出てくるので、
その関係性なども特設サイトでは分かりやすく書かれているので
こちらを見ると良いかもしれないです。
 横山秀夫『64』文藝春秋特設サイト
  http://bunshun.jp/pick-up/64/


HPのYuimiko's MemoriesのGalleryにも本の紹介をしているので、
そちらも良かったら見てみて下さい。
http://happy1996.web.fc2.com/

湯本香樹実 夏の庭 The Friends [作者や行]


夏の庭―The Friends (新潮文庫)

夏の庭―The Friends (新潮文庫)



ストーリーは死んだ人って見たことある?怖いけど見たい。
知りたいことは知りたいんだ!  
町外れに暮らすひとりの老人をぼくらは「観察」し始めた。
生ける屍のような老人が死ぬ瞬間をこの目で見るために。夏休みを迎え、
ぼくらの好奇心は日ごと高まるけれど、不思議と老人は元気になっていくようだ—。
いつしか少年たちの「観察」は、老人との深い交流へと姿を変え始めていたのだが…。
喪われゆくものと、決して失われぬものとに触れた少年たちを描く清新な物語。

湯本さんの作品は初めてで、この作品は映画化・舞台化された他に
10カ国以上で刊行され、日本児童文学者協会新人賞、児童文芸新人賞、
米国バチュールダー賞、ボストン・ブローブ=ホーン・ブック賞受賞作です。

この作品を読み始めてからストーリーの主人公のように
懐かしい小学生時代にタイムスリップしたような感覚になりました。
子供の頃は知らないことが沢山あって、
大人の事情も知らないけれどそれも知りたくなったり
何に対しても興味津々な頃を思い出させます。

この少年達は人が死ぬ瞬間を見たかったというところから
おじいさんの家の軒先で見張りをしていたのに、
徐々に中に入ってしまい、しまいには仲良くなり
怖いと思っていたおじいさんは優しくてまるで自分の孫のように
接しているのがとても微笑ましい光景です。

おじいさんからは普段両親からなどから教えてくれたり、
少年の知らなかった事も教えてくれたりとこうゆう関係は
一昔では普通の光景ではあったけれど
今の時代では無いのでこうゆうのは良いなと思いました。

子供の頃は死というのは漠然と思っているもので、
身近に亡くなった人がいたとしても死の先には何があるのかと思ったりするものです。
その興味を持った少年達が最後には悲しい事に対面してしまいますが、
そこから得たことはとても大きかったと思います。
「もう夜中にトイレにひとりで行けるんだ。こわくないんだ。」
と一言がこのひと夏の貴重な経験から生まれた言葉だと思うので
ひとつこれで成長しているだなと思いました。
ラストの少年達はそれぞれの道に進んでいきますが、
それがまた清清しかったです。

この作品は死をテーマに取り込んでいますが、
暗いイメージが何処にもなく少年と老人との交流がとても心温まり、
ほろりとさせるところもあり、久しぶりにとても良い作品に出会えました。


HPのYuimiko's MemoriesのGalleryにも本の紹介をしているので、
そちらも良かったら見てみて下さい。
http://happy1996.web.fc2.com/

薬丸岳 天使のナイフ [作者や行]


天使のナイフ (講談社文庫)

天使のナイフ (講談社文庫)



ストーリーは生後三ヶ月の娘の前で桧山の妻を惨殺したのは三人の少年。
四年後そのうちの一人が殺された。犯人と疑われる桧山。 
「殺してやりたかった。でも俺は殺していない。」
これは天罰か、誰かが仕組んだ罠なのか?
裁かれなかった真実と必死で向き合う男を描いたサスペンス
各方面から絶賛された第51回江戸川乱歩賞受賞作。

薬丸さんの作品を読んだのはこれが初めてです。
こんなに犯人を推理しても全然予想がつかず、
ストーリーが何点にも転び展開の早さに引き込まれていきました。

妻が殺された犯人は少年だった。
けれどその少年は少年法に守られ、夫の檜山には少年法が改正される前の
出来事であったから彼らの名前を知ることも顔も知ることもなく、
家庭裁判所でも教えてくれることはなかった。
2001年4月になって少年法は改正されてそこで初めて、
被害者による記録の閲覧及び謄写という条項が付け加えられたそうです。
それまでは罪を犯した少年たちの健全な育成と保護という趣旨のもとで
プライバシーが守られ、多くの被害者やその家族は事件の詳細などは
知ることが出来なかったのです。
少年法が改定する前については本の中だけでなく、
実際にも同じような事件があり、それに対して必ず少年法の壁があって
なんで人を殺めた少年が少年というだけで、罰を逃れているのだろうと
憤りを感じていたところでした。
けれど少年法が改定されたことによってそれは少し解消されたものの、
遺族の人達は被害者が戻ってくることではないので悲しみはずっと続くと思います。
その言葉が「国家が罰を与えないなら、自分の手で犯人を殺してやりたい。」
と自然と言葉になってしまったのかと思います。
身内のものだったら誰でもそう思うのが普通たと思います。

檜山もそんな一人で何故妻が殺されなければならなかったのかと思い、
事件の真相を追求していくうちに、今度は加害者だった少年が
一人一人と殺されていき自分が犯人と疑惑をもたれてしまう。
けれどそんな中でマスコミライターや少年院の看守などの話を聞いて
いくうちに徐々に事実が判明していきます。

妻が殺された事件の中にも犯人を解く鍵となるまたもう一つの事件が
潜んでいて、これがまた因果なものだなと思ってしまいました。
少年院の看守の話では看守だから子供達を躓きに罰を与えるのではなく、
教育をという理念があるので被害者の遺族との考え方が
違ってしまうのが実情のようです。

犯人が思わぬところからラストに出てきたのは本当に驚きました。
犯人の心情も分からないこともないですが・・・

この作品はサスペンスというより少年犯罪をテーマとして
描かれているので、どちらかというと社会派小説とも思えました。
登場人物のそれぞれの贖罪や少年犯罪の本当の更生とは何か?
マスコミの被害者に対しての報道の仕方もどうなのだろうか?
そうゆうことなど含めて考えさせられて、盛り沢山で読み応えのある作品でした。

江戸川乱歩賞に相応しい作品だと思い、
これから薬丸さんの作品にも注目していきたいと思います。


HPのYuimiko's MemoriesのGalleryにも本の紹介をしているので、
そちらも良かったら見てみて下さい。
http://happy1996.web.fc2.com/

吉田修一 悪人 [作者や行]


悪人

悪人

  • 作者: 吉田 修一
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
  • 発売日: 2007/04/06
  • メディア: 単行本


ストーリーは保険外交員の女が殺害された。捜査線上に浮かぶ男。
彼と出会ったもう一人の女。加害者と被害者、それぞれの家族たち。
群像劇は、逃亡劇から純愛劇へ。なぜ、事件は起きたのか?
なぜ、二人は逃げ続けるのか?そして、悪人とはいったい誰なのか。
揺れ動く2人の純愛劇と家族、友人たちの思いを静謐な筆致で描く傑作長編。

CMを観て気になっていた作品で、深津絵里さんがモントリオール世界映画祭で
最優秀女優賞を授賞したので余計に気になってこの本を手にしました。
吉田さんの作品は初めてです。

それぞれの人物の視点から描かれていて、ストーリーの展開も早いので
それにぐいぐいと引き込まれてあっという間に読み終えてしまいました。
こんなに夢中になって読んだ本は久しぶりです。

土木作業員の清水祐一にも辛い過去があり、その育て親といっても過言でもない
祖母の房枝にも拭えない過去があり、
加害者側にはいくつか複雑な過去があります。
それが事件を引き起こしてしまったとは思えないですが、
祐一はとにかく一人ぼっちになってしまうのが寂しくて、
怖くてたまらなかったのが伝わります。

後に祐一と逃亡することとなる光代との出会いは、
飲み会で酔った時に遊び半分で初めて出会い系サイトでたまたま
新着欄から選んだという些細なことからです。
それなのに祐一からある事を告げられた時にたじろいだものの、
そのまま一緒に行いってしまうという意外な展開。
それもきっと光代の心も寂しかったのかもしれないです。
祐一も本当の愛に飢えていて、光代も愛に飢えていたから
ずっと傍にいられたのかと思います。
お互いの愛が必要だったから支えあっていたのかとも思いました。

被害者にもこの場合は落ち度があったのかと思うことがありました。
携帯サイトから知り合い、知り合った男性と物を扱うかのように
次々と男性と付き合っていたので・・・

けれど残された被害者の両親の様子を見るととてもいたたまれないです。
まだ何処かで生きているんじゃないかと、
何かの間違いではないかと、
何処かで自分に助けを求めているのではないかと、
何かの間違いではないかと・・・
葬儀では親戚などの間で表では気の毒にと言っていましたが、
裏では陰口などを叩いていたのでそれも可哀想でした。
真面目に生きてきた両親なのにそれをあざ笑う、捜査線上の男。
人の悲しみを笑うことが分からない、他の人達も一緒になって笑うのが分からない。
誹謗中傷する人達、ワンドショーのコメンテーターが勝手に決め付けて
話しているのが分からないという気持ち。
被害者の両親の気持ちがストレートに表れているので、
ニュースなどで事件のあった方の気持ちはこんな辛い気持ちなのだと思いました。

この事件は現代社会を映しているように思います。
人の心がだんだんと希薄になり、それから生じてしまった事件。
人は誰でも一人では寂しいのです。
だから誰かに寄り添いたいと思うのです。
けれどその寄り添い方も人それぞれで、本当に心を打ち解けて寄り添いたかったり、
被害者のような人の寄り添い方をする人もいるのかもしれないです。
ただ祐一が本当に一番寂しくてたまらなかったというのは伝わります。
それが変な事から事件に発展してしまうのが、
とても可哀想にも思えました。
私には本当の悪人は犯人だけではなく、犯人に辿りつく人々も悪人に思えました。

『悪人』はモントリオール世界映画祭に出品した作品です。
妻夫木聡、深津絵里、岡田将生、満島ひかり、
樹木希林、柄本明ほか出演されています。
悪人の公式サイトはこちらです。
 http://www.akunin.jp/index.html


HPのYuimiko's MemoriesのGalleryにも本の紹介をしているので、
そしちらも良かったら見てみて下さい。
http://happy1996.web.fc2.com/
前の10件 | - 作者や行 ブログトップ
メッセージを送る